腸内環境を整えればパフォーマンスは上がるのか?

近年「腸」が注目を集め続けていますね。

その理由は腸が単なる消化器官ではなく、体全体に深く関わる重要な役割を担っているからです。免疫機能の多くを支えているだけでなく、ビタミンの産生、神経伝達物質やホルモンの生成にも関与していますし、さらに脳とは約2000本の神経を通じて密接につながっており、体のさまざまな機能に影響を与える「中枢的な存在」として捉えられるようになってきています。

こうした背景から腸に関する研究は急速に進んでいるわけですが、その中でもいま私が特に興味を持っているのが元サッカー日本代表の鈴木啓太氏が取り組んでいる腸内細菌の研究です。

鈴木氏の研究によると、一流アスリートの腸内環境には一般の人とは異なる特徴があることが分かってきているようです。具体的には腸内細菌の種類が多く多様性が高いこと。さらに酪酸菌など、体にとって有益とされる菌が豊富に存在していることなどが報告されているそうです。加えてアスリート由来の腸内細菌が持久力の向上と関係している可能性も示されているということです。

こうした話を聞いてしまうと「腸内環境を整えれば普通の人でもプロアスリート並みの運動能力を得ることも出来るのではないか!?}という風に考えてしまう人はおそらく多いと思いますし、実際にその方向での研究や取り組みも進められています。

ただ一方で、私はこのテーマを少し違った角度から見ています。

それは「その状態がどこまで一般の人に再現できるのか」という点です。

というのも一流アスリート特有の腸内細菌の特徴があるということは、その腸内細菌がパフォーマンスを高めているというよりも、日々のトレーニングや生活の積み重ねによって体が変化し、その結果として腸内細菌の構成もアスリート向けに変わっていった可能性があるとも考えられます。

実際、腸内細菌は食事・運動・ストレスなどの影響を受けて常に変化するものですから。

ですから同じ人であっても環境が変わればそのバランスは大きく変わりますし、ましてやトップレベルのアスリートと一般の人ともなれば、日々の負荷や生活の質がまったく異なります。

そうした理由からアスリートの腸内環境をそのまま他の人に当てはめても、同じような変化が起きるとは考えにくいはずで、となれば「腸内細菌が体をつくる」のか、それとも「体の状態が腸内細菌を変える」のか。あるいは「この関係はどちらか一方ではなく、お互いに影響し合っているのではないのか?」といった点についても考える必要が出てくるということです。

そう考えると腸内環境をあらかじめ決められた「理想形」に近づけようとする考え方そのものに、どこか無理があるということにもなってきます。

ですから「単純にそのまま真似すれば良いという話でもなさそうだな」というのが正直な感想です。

とこのように、私なりの少し意地悪な考察も入れてみはみましたが、そうはいっても非常に面白い視点を持った研究であることは間違いありませんし、仮に一流のアスリートにみられる特有の腸内細菌叢を一般の人で再現できた場合には、体にどのような変化がみられるのかという点については非常に興味をそそられるものがあります。

本当に運動能力が飛躍的に向上したり、体力が大幅に増えるなんてこともあるかもしれませんからね。

そういうことを想像してみると、この鈴木氏の研究というのは今後も継続して見守っていきたいと思いますし、何かしら良い成果が出てくることを期待はしたいと思います。

もしかしたら近い将来は、腸内細菌叢へのアプローチによって一流のアスリートが育てられるような時代が来るなんてこともあるかもしれませんね。