
私が住むたつの市に「kanuka」というカフェと自然食品の販売をされているお店があります。
そしてこのkanukaさんは有名な日本画家・絵本作家である秋野亥左牟さんのご息女であり、日本画家の秋野不矩さんのお孫さんにあたられます。
私もたまにお茶をしに行ったり食品を買いに行ったりしているのですが、先日お店に行くと「臨時休業中」となっていました。
後日あらためてお店に行った際、
「先日お休みされていましたけど、どこか行かれてたんですか?」
と聞くと、
「親戚の人とネパールに行ってました」
とのことでした。
なんでも亡くなられたお父さんがネパールと縁が深く、一時期は長期滞在をされたこともあったそうで、今回はそのお父さんの足跡をたどる旅だったのだとか。
そのため宿泊先は普通のホテルではなく、知人のつてを介して一般の方のお宅に泊めてもらったそうで、まさに旅行というより旅といった感じだったそうです。
搾りたてのヤギのミルクを飲ませてもらい、そのおいしさに感動したり、ネパールの寺院の空気に神秘的なものを感じたり。
さらには偶然にも当時のお父さんのことを知っている方に出会うことができたなど、かなり感慨深い旅になったようで、
「すごく楽しかったです」と話されていたのが印象的でした。
ただその一方で芸術家にはよくありがちな話だと思うのですが、kanukaさんのお父さんはかなり自由奔放な方だったそうで、ご家族はその生き方に振り回されることも多く、日々の中でいろいろと大変な思いをされてきたようです。
実際にこれまで伺ってきた話も、その自由さゆえのご苦労が伝わってくるものが中心でした。
だから最初は
「すごい人生ではあるけど家族としては本当に大変だったんだろうな」
という印象の方が強く残っていました。
けれど今回のネパールの旅の話を聞いていて、お父さんがご家族に残されたものは苦労や大変さだけではなかったことがよくわかりました。
絵本や絵画といった作品はもちろん、こうしてたどることのできる足跡や思い出、そして人とのつながりの中にもお父さんの人生や世界観を感じることができたわけですから。
あとから振り返ることができる思い出や体験、その人がどんなふうに生きてきたのかというその跡を残すということはやはり大切なことの一つですし、なにか感慨深さを感じますね。
もちろん前述のようにご家族としては大変なことも多かったでしょうけれど、でも時間を超えた素晴らしい贈り物だったのではないでしょうか。
目に見えるものではないですしすぐに価値が分かるものでもないかもしれませんが、ふと振り返った時に心に響き、その意味やありがたさがきっと少しずつ分かってくるものなのだと思います。
昨今お金の価値観ばかりが高まってしまい、どこかゆとりがなく、優しさにも欠けた世の中になってしまったような感が否めませんが「世の中捨てたもんじゃない」というのはこういうことですね。
今回のお話は親子の温かさを感じる、心に残る素敵なエピソードでした。