
① ミネラルって何?
ミネラルとは、体の中で合成できず外から摂るしかない無機元素のことです。カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、亜鉛、銅、セレン、ヨウ素などが代表例です。
ミネラルはエネルギー源ではありませんし、「体の材料」というのもあくまでほんの一面に過ぎません。ミネラルの本質的な役割は、体の中で起こる反応や調整が正しく進むための「条件」を整えることにあります。言い換えれば体のスイッチや回路が正常に働くための環境そのものです。
② なぜ大事?
神経が電気信号を流すこと、筋肉が縮むこと、心臓がリズムよく動くこと、ホルモンが分泌されること、細胞の内と外のバランスを保つこと。これらはすべてミネラルがあって初めて成り立つ現象です。
さらに重要なのはミネラルがビタミンの働きそのものを支えているという点です。多くのビタミンは酵素反応の一部として働きますが、その酵素の構造や活性にはミネラルが必要です。
亜鉛、マグネシウム、鉄、銅などは、多くの酵素の中心部分を構成し、ビタミンが関与する代謝反応が起こる「場」をつくっています。
つまりビタミンは働く役者であり、ミネラルは舞台装置そのものといった関係にあります。
この意味で、ミネラルはビタミン以上に「土台寄り」の(重要な)栄養素だと言えます。
③ミネラルが足りている現代人は殆どいない
ところがこのように体の土台として極めて重要なミネラルが、現実の食事では十分に確保されていない傾向があります。
実際、厚生労働省の国民健康・栄養調査などでも、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛など複数のミネラルで、推奨量に満たない摂取傾向が続いていることが示されています。つまり多くの人が自覚のないまま慢性的な不足状態にある可能性が高いのです。
ミネラルが不足すると、自律神経やホルモン、免疫、代謝の調整が少しずつうまくいかなくなり、疲れやすさ、不調の長期化、回復の遅れといった形で現れてきます。ただしこれは急に起こるのではなく、長い時間をかけて静かに進行します。
体は血中濃度を一定に保つため、まずは骨や組織に貯蔵されたミネラルを少しずつ使って不足を補います。そのため外からの供給が足りなくても、しばらくは大きな異変が出ません。
しかしその状態が長く続くと、ある時点で貯蔵が枯渇し、急に不調が表面化します。骨粗しょう症などがその典型で「気づいたとき(症状が現れた時)にはかなり進行していた」という形になりやすいのが特徴です。
④ なぜ効きにくい? なぜ気づきにくい?
ミネラルは血中濃度が少し変わるだけでも生命に関わるため、体は吸収と排泄を非常に厳密に管理しています。そのためたくさん摂ったからといって一気に増えることはありません。
さらに言えば、ミネラルは腸内環境や他の栄養素の影響を強く受け、もともと吸収されにくい性質があります。加えて年齢を重ねるごとに胃酸分泌や消化吸収機能が低下し、30代から60代にかけて吸収効率が2〜4割ほど低下する(10倍以上低下するという意見もあります)とも言われています。
このため不足は静かに進み、その不足に気づきにくく、摂ってもすぐには改善もせず、仮に改善があったとしても体感しにくいという状態が起こります。
またミネラルは多すぎると危険でもあります。とくにナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどは血中濃度がわずかにずれるだけで、不整脈や意識障害、最悪の場合は命に関わることもあります。だからこそ体はミネラルを「一気に満たす」ことを許さない仕組みになっています。
⑤なぜ意識し続ける意味がある?
ミネラルの補給は症状を消すことではなく、体が自分でバランスを取り戻すための条件を整えることです。
欠乏が長い時間をかけて進んだのであれば、回復にも時間がかかるのは自然なことです。続けることでまず貯蔵が満たされ、次に調整が回りやすくなり、回復が追いつく余地が生まれます。
しかし現代の食環境では、通常の食事だけで必要量を安定して満たすことが年々難しくなっています。食品中のミネラル含有量の低下、加工食品の増加、腸内環境の乱れ、加齢による吸収低下などが重なっているからです。
つまり摂らなければ不足し、摂ってもすぐには満たされず、しかも多すぎると危険という、非常に繊細な栄養素がミネラルだと言えます。
まとめ:ミネラルの本当の重要性
ミネラルは一見すると「効きにくい」「実感しにくい」栄養素です。しかしそれは体の表面を動かすのではなく、体が動く仕組みそのものを支えているからです。
ミネラルは、神経やホルモン、免疫、代謝の調整に関わり、さらにビタミンが働くための場をつくり、反応を成立させています。つまりミネラルは、目に見える働きのさらに奥にある「働きが起こる前提条件」を担っている栄養素です。
そしてその土台が崩れても体はすぐには悲鳴を上げません。貯蔵を切り崩しながら静かに耐え続け、限界に達したところで初めて症状として表れます。その時にはすでにかなり進行していることも少なくありません。
だからこそミネラルは「効かせる」ものではなく「枯らさない」事が重要な栄養素なのです。
派手な変化は起こしませんが、体の基盤を支え続けるという点でこれほど重要な栄養素は他にありません。