
熊被害について最近はメディアで取り上げられる機会が増えていますね。
熊が人の生活圏へ普通に入ってくるようになり、作物を食い荒らしたり、人間を襲ったりすることもある。そのため「熊は危険な動物だ」「駆除が必要ではないか」という風潮が広がり始めているように感じます。
しかし兵庫県西宮市に本部を置く自然保護団体「日本熊森協会」に所属している方の話を聞くと、熊被害にはまったく違った見方があることが分かってきます。
というのも熊にはミツバチと同じように自然界の循環を支える役割があるそうで、熊が木の実を食べ、移動した先で糞をすることによって植物の種がさまざまな場所へ運ばれ、それによって山の森林バランスが保たれるようになるそうです。また熊が花の蜜を吸う際には鼻や体に付着した花粉が別の花へ運ばれることによって受粉を手助けする役割も担っているといいます。
ところが日本では針葉樹であるスギやヒノキばかりが植えられ、熊の食料となる木の実や花をつける広葉樹が十分に残されてきませんでした。
さらにニホンオオカミがいなくなったことで鹿の個体数が激増し、山に生えている植物や木の芽まで食べられるようになりました。その結果熊が食べる木の実や花の蜜も劇的に減っているといいます。
加えて花の受粉を担ってきたミツバチが激減していることも熊被害に拍車をかけていると思われ、ミツバチが減れば受粉できずに実や種を残せない植物が増えてしまい、その状態が続けばやがて花や木の実をつける植物そのものが減り、熊が口にする蜜や木の実も少なくなっていきます。
肝心の植物が減ってしまえば、そもそも熊の食べ物も花粉を運ぶ機会も失われるということです。
兵庫県宍粟市のリンゴ農家ではミツバチがいないため、農家の方が手作業で受粉させているところもあるそうですから本当に深刻な状況となっていて、それほどまでに自然界における受粉の循環が失われつつあるということです。
そしてこうした状況のなか、かつては神域として人があえて立ち入らないことで守られてきた熊の生息域である山の尾根やその周辺に、現在は風車や太陽光パネルが設置されるようになりました。
その結果熊の生息域がどんどん侵害されているという現実もあります。
そしておそらくその影響によって東北の熊が次第に南下し、東北では熊の数が激減する一方、関東や信州方面では個体数が増えているといいます。さらに九州に至ってはこれまで挙げてきたさまざまな理由が重なり、熊は完全に絶滅したと考えられています。
つまり熊には自然界の生態系を守るうえで重要な役割がある・・・・・にもかかわらず、人間が熊の生息環境を壊し、その結果として熊が人間の生活圏へ出没するようになった。それなのに「危険だから」という理由でさらに熊を駆除しようという風潮が見られるように感じる。
でもそれはおかしいのではないか。
これが「日本熊森協会」の主な主張だそうです。
話を聞いてみるとなるほど大半において筋が通っているように見えますし、非常に耳を傾けるべき点がある話だと感じます。
そして近年の日本のメディアは一方的な報道が多くなっていることは周知の事実で、報道の自由度ランキングでも日本は世界70位と、発展途上国並みの報道の偏りがあるとされていることからも、熊被害に関する報道について公平な視点で発信されているかと言えば、非常に怪しさを感じてしまいます。
だからこそ今回のような別の角度からの話を知る機会を得れたことはすごく良い事だったように思いますし、非常に貴重な情報だったとも思います。
確かに熊による被害は大きな問題ではあります。
しかしそれは表面に現れている問題に過ぎず、本質的には日本の自然環境や生態系が崩壊しかかっている可能性を示唆したものでもあると思います。
「日本熊森協会」の主張がすべて正しいとはかぎりません。それでも今回の話を聞いたことで熊被害をただ「危険な熊が人里へ出てきた」というだけの問題として捉えるのではなく、その背後で山や自然環境に何が起きているのかまで見ていく必要があることには気づかせていただきました。
熊の姿だけを見ていても熊被害の本当の原因・本当の問題はきっと見えてこないのでしょうね。
