物理学が解き明かす「ゆとりを持つことの大切さ」について


岡山のノートルダム女子学院に保江邦夫先生という方がおられます。
合気道の世界では達人として有名な方であり、UFOの存在であったり合気道が起こす常識では説明できない現象を、物理学で解き明かしていきたいとの想いから物理学の教授になったといういわゆる変わり種の教授で、学生さんから非常に人気があるそうです。
僕自身も以前加古川市で行われた「歴代の合気道の達人の技を再現する」という保江先生のイベントに参加してご本人と直接お会いしたことありますが、とっても気の優しい面白いおじさんでした。
その保江先生。
ユーチューバーとして様々なチャンネルに出演しては面白い話をされているのですが、その大半は古武道の話かご自身が執筆された書籍関連のものになります。
ところが色々見ていくと、一件だけ大学での講座の様子が映されているものがありました。
その時の授業の内容というのが「なぜ貨物列車はあれほど多くの貨物車をを引っ張ることができるのか?」というもので、というのが本来先頭を走るあの貨物列車には、重たい貨物車を何両も引っ張るだけの力はないのだそうです。
でも実際には最大27両もの貨物車を引っ張って走っていますから、なぜそのようなことが可能になるのか?ということを物理学によって解き明かしていくという内容でした。
そこで行われたのが人を使った体験型の実験です。
五人ほどの学生が横一列に並び、隣の人と腕を絡め合って立ちます。
そして一人の生徒が一番端にいる学生を引っ張ったり押したりします。
すると絡め合った五人全員の腕に隙間が全くなく、ピンと張りつめた状態のときは五人の学生はビクともしないのですが、五人の絡め合った腕に僅かな隙間を作った状態で引っ張ったり押したりすると、たちまち五人全員がふらつき始め、その場に立っていられなくなりました。
これはドミノを想像する方が分かりやすいと思うのですが、隙間なくドミノを20個も30個も立てた時、それを倒すにはもの凄く大きな力が要りますが、わずかで良いから隙間を開けて立てたものを倒す力は僅か一個のドミノを倒すを力で十分です。
そして最初の一個が倒れればあとはその倒れたドミノの力を借りることが出来るので、以降の2個目3個目と倒していくのにそれほど力は必要としません。
貨物車もそれと同じで、連結部分に隙間が全くなければ、それらを動かそうと思うとつながった車両の分だけ力が必要となりますが、連結部分に僅かな隙間を作ってやってさえいれば、20両引っ張るのも30両引っ張るのも、それらを動かすために必要なのは最初の一両目の分の力だけで済んでしまいます。
力が弱くても貨物列車が何十両もの列車を引っ張れてしまうのは、このような物理の法則が働いているからだそうです。
ここが物理学の面白い所のようですが、翻って日常様々な場面において「心にちょっとした余裕を持つことが大事だ」といった話を聞くことがよくあると思うのですが、何となくその重要性は分かるような気はするものの、その理由を明解に言語化したり実感することはなかなか難しい事ではないでしょうか。
ですが保江先生の授業を拝見するとゆとりを持つということは、本来持っている力の何倍もの力を生み出せる可能性を生み出すことであり、また反対にゆとりがない状態というのは、本来持っているはずの力を微塵も引きだすことが出来ず、せっかくの能力を敢えて潰してしまう行為であるということが見えてきます。
このことはあくまでも物体における法則のことではあるものの、やはり心の在り方・持ちようにも通ずるものがあるのではないでしょうか。
だからこそ「心に少しばかりのゆとりを持つことが大事」だということが言われ続けているのだと思います。
そして振り返ってみれば心当たりがある方も多くおられると思いますが、物事がうまくいかない時は大抵心にゆとりがなく、いつもイライラしてちょっとしたことでも許せない気持ちが湧いてくるものですが、物事がうまく進んいる時は心に余裕があり、少しくらいの事で怒ったりイライラしたりしません。
それは見方を変えると、もしかしたら心に余裕を持ち、少しくらいの事でイライラしたり怒ったりしないから物事がうまく進み始めるのだと捉えることもできますから、何事もうまくいかない時ほどじつは心のゆとりの無さが大きなブレーキになっている可能性を表しているように思います。
ですから物事がうまく運ばない時ほど心のゆとりに目を向けてみて、わずかな余裕を持つことを心がけてみると良いのではないでしょうか。