いつの間にか時間が過ぎていて気付けば色んな思い出が詰まっていました

先日一人暮らしをしている父がコロナに罹ってしまいました。

幸いすぐ治りはしたようですが、「味覚がマヒ」したり「体がだるい」という後遺症はやはり出ていて、一人暮らしを続けることに少し不安が出てきたようです。

「そろそろこの家と土地を売って、お前の近くの施設にでも入ろうかなあ」

と言い出しました。



現在父が住んでいる所は岡山県の東端のとある村の山の中で、それこそぽつんと一軒家にでも出てきそうな所に家を建てています。

土地がタダ同然に安いので、およそ1000坪の敷地を購入。

●週一回家の周りを乗用草刈り機で刈る
●小型のユンボ―や農機具などを収納する小屋だったり
●車や農作物を保管する小屋などを自分で建てる
●家の周りに日よけと防風を兼ねた木を植林する
●畑を作って野菜を育てる
●果物や梅などの木を植えて実りを収穫する

といったそんな生活を20年ほど続けてきたみたいです。



まだ家が建設中だったころに見た風景は「とても寂しく人が住むような所ではない」という印象しか受けませんでしたが、今は自然の豊かさと人の温かさを感じれる過ごしやすい土地に生まれ変わったように思います。

20年という月日をかけて手を入れていけば、人が住めないような土地でも生まれ変わる様を見せてもらえたような気がします。




そしてこれは最近知ったことですが、僕が父の家に全く寄り付かなかった時期が数年間あったのですが、その間にどうやら末期がんの患者さんの受け入れをしていたようで、その方が亡くなるまで、父が自分の家でその方をずーっと世話していたようです。

「知人から頼まれて当初は断っていたけれど、断り切れなかった」

と本人は言っていましたが、何かしら人生の中で償いたいものがあったからこその受け入れだったのではないかと僕はそう感じています。



亡くなられた方にはお子さんが一人おられたそうですが、もう何年も連絡を取っておらずほぼ音信不通状態。

ただおおよその住所だけは分かっていたようで、その事だけを頼りに関東まで車で出向き、ダメもとで役所に事情を説明してお願いしてみた所、

「本来ならお受けできない相談ですが事情も事情ですし今回は特別に」

という事で、そのお子さんに役所が連絡を取ってくれて無事に会うことができ、遺骨や遺品を渡すことが出来たそうです。



「せめて遺骨だけでも渡してあげたい」という想いがあったのでしょう。

その話をしているときの父は珍しくホッとした表情をしていたので、それがとても印象的でした。



そんな20年を過ごしてきた父の家も間もなく手放す準備に入ります。

もちろんすぐに買い手が見つかるとは思っていませんが、ですが次にこの家と土地を所有される方には、父と同じように穏やかな田舎生活が送れる方であれば良いなと願っています。



四季を楽しみ、自然と共存できるような方であればきっと父も喜ぶことだろうと思います。