人生を変えたトイレ掃除

僕が住む家からおよそ200メートルほどの位置に、新宮運送さんという会社があります。

不景気と言われる昨今の状況下でも安定して業績を上げ続けられている会社で、いつの間にか複数の大きな集配センターを増設。

現在はカップ麺のラ王の容器などを製造している日本スチレンペーパー(JSP)さんの荷物などをメインに運搬されています。




この新宮運送さん。

地元では大変評判の良い会社で、というのも毎朝7時過ぎには社員さんが誰に強制されるわけでもなく、自主的に会社周辺の道路を掃除されていたり、通学中の学生にはおはようの声掛けもされるなど、地域をとても大事にされているからです。

僕も掃除をされている社員さんを何度も見かけていますが、この会社の周辺の道路には小石やごみが少なく、本当に頭が下がります。

そういう社員さんの姿や企業姿勢を見させていただくと「素晴らしいな」と思います。




ですがこうした企業姿勢は最初からだったわけではないようです。

それは現社長を務められる木南さん(2代目)のお話にも出てくるのですが、その木南さんが社長業を引き継がれたのは今から23年前の2000年。




社長に就任した当時は

とにかく利益を上げる、それが経営。『仕事を取ってきたんやからやれ!』と社員を叱咤激励

トラックを走らせるだけ利益が増える。走れ走れと特別賞与も出す。教科書通りの管理も導入

それが社長として立派だと思ってました

だけど社員はついてこなかった

朝礼を導入しても誰も出てこない

「業務日報をルール化しても誰も書かない」

「無断欠勤もあった」

と仰られていて、社長就任からしばらくの間は会社の雰囲気が相当悪く、とてもではないけれど地域や社会を大事にするような会社ではなかったようです。




「新宮運送を日本一の運送会社に」との意気込みで社長に就かれたそうですから、きっと理想と現実のあまりの違いに相当な落胆があっただろうと思います。

ですが、そんなどん底から大きく変わる転機となったのが「トイレ掃除」なのだそうです。




ある日「社長が掃除をすると会社がが良くなるそうだ」と知人から教えられたことをきっかけに、「掃除程度で儲かれば、儲けもの」との思いから出会ったのが、イエローハットの創業者鍵山秀三郎氏。

鍵山氏と言えば、自主的に社内のトイレ掃除を始められたことがきっかけとなってイエローハットを大きくされたことで大変有名な方ですが、徹底的に掃除を貫く鍵山さんを見て、

掃除の仕方が違う

ここまでやるかです

経営者としての執念と凄みを感じました

実践だからこれなら自分も出来ると確信です

会社や駅周辺の掃除を始めた

のだそうです。




そして「益はなくとも意味はある」という鍵山さんの言葉によって、利益の為ではなく、地域や社会のために出来ることを行うことの大切さに気付くことができ、無償の精神で社内のトイレ掃除も自ら進んで行うようになった結果、今まで険悪な仲だった社員さんたちが少しずつ心を開き始め、いつしか社員さんも自主的にトイレ掃除を行ったり会社周辺の道路を清掃されるようになったのだとか。

そうすると不思議なことに会社の業績もそれに合わせるかのように上がっていき、現在のような大きな規模の運送会社にまで成長されたということです。

掃除には、会社や社員さん一人一人の雰囲気を変えたり、仕事の質や信用を高めるような効果があるのかもしれません。




社長の木南さんは現在たつの市周辺に掃除に学ぶ会を設立され、日曜日になるとトイレ掃除のボランティア活動を何年にもわたって継続。掃除を通じて世の中から心の荒みをなくす運動の普及に尽力されています。

そして今では鍵山氏に掃除に学ぶ会の講演依頼があった際、鍵山氏のスケジュールが合わない場合は「私の代わりに木南さんを」と推薦されるほど信頼されるまでになり、各地で講演も行われているということです。