ゆっくり燃える生き方

新年明けましておめでとうございます。
旧年中には大変お世話になりましたが、本年もどうぞよろしくお願いします。
先日一年の始まりに相応しい話を聞きましたので、ご挨拶がてらそれをご紹介させて頂こうと思います。
ある冬の日のことです。
外は息が白くなるほど冷えていて、地面には霜がうっすらと降りていました。
祖父と孫は家の裏にある小さな空き地で焚き火を囲んでいました。
積まれた薪にゆっくりと火が回り、パチパチという音が静かな冬の空気に響いていました。
しばらく炎を眺めていた孫がふと首をかしげました。
「さっき薪を入れた時すごく大きく燃えたのにすぐ小さくなっちゃったね。
もっといっぱい入れればもっと大きくなるのかと思ってた」
その言葉に祖父は焚き火を見つめたまま、目尻を下げてゆっくり笑いました。
「火ってのはな、ただ強くすればええってもんじゃない。
焦って薪を足しすぎると一気に燃え上がるけどすぐに勢いが落ちて灰になる。
かといって怖がって何もせんかったら火はどんどん弱っていく。
大事なのはそのあいだを見極める火加減なんや」
孫は祖父の言葉を反芻しながら炎の揺れをじっと見ていました。
赤い光が薪の表面をなめるように動き、風が吹くたび揺れ方が変わります。
「火加減……むずかしいね」
ぽつりと呟く孫に、祖父はそっと薪をひとつだけ足しながら言いました。
「最初はむずかしく見えるやろうな。
けど、人生もおんなじなんや。
急ぎすぎて空回りすればすぐに疲れてしまう。
反対にやるべきことから逃げてばかりやと気持ちはどんどん冷めていく。
だから少しずつでええ。
様子を見ながら一歩一歩足していけばちゃんとあったかさは続くんや」
孫は焚き火の前に手を差し出して、その温かさを確かめるように触れました。
パチッと小さく弾ける音に思わず肩をすくめながら、
「……人生も、こんなふうに?」
と、少し照れくさそうに聞きました。
祖父は薪の粉を軽く払い静かに頷きました。
「そうや。
自分にとってちょうどええ火加減を見つけること。
一年ってのはその練習みたいなもんなんや。
急がんでもええし、たまには立ち止まったってええ。
けど火だけは絶やしたらあかん。
ほんの少しでも前に進むための熱を残しておくんや」
炎は一定のリズムで揺れ続け、そのまわりの空気だけがじわりと穏やかに変わっていきました。
冬の冷たさと焚き火の暖かさがちょうどいい場所で混ざり合うような感覚。
その光景を思い浮かべると祖父が伝えたかったことが静かに浮かび上がってきます。
走りすぎなくていい。
止まりきらなくてもいい。
ただ自分のペースで火を絶やさずに進んでいけばいい。
今年は焦らず、でも止まらず。
自分だけの火加減を楽しめる一年でありますように。