肝機能障害と糖尿病が増えている意外な理由

近年、肝機能障害と糖尿病を患う人が急増しているそうです。

一見すると肝臓と糖尿病は別々の問題に見えがちなのですが、実際には肝臓は血糖値の調整にも深く関わっているため、じつは両者は切り離して考えることができません。

ではなぜ肝臓の働きが低下すると身体にさまざまな問題が起こるのでしょうか。

肝臓の大切な役割の一つが、体内に入ってきた有害物質や身体の中で生じた不要な物質を分解し処理することです。

肝臓の働きが低下するとこうした物質の処理が十分に進まなくなり、身体の中に負担がかかり続けることに繋がっていきます。その結果、疲れが抜けにくい、身体がだるい、食欲が落ちるといった不調が現れやすくなります。

そして肝臓は解毒だけをしている臓器ではありません。

食事から摂った栄養を身体が使える形に作り変える「代謝」も行っています。たとえば身体をつくるために必要なタンパク質を合成したり、栄養をエネルギーに変えたり、余ったエネルギーを蓄えたりしています。

私たちの身体は古くなった細胞を新しい細胞へと絶えず入れ替えています。そのためには新しい細胞をつくる材料が必要です。その材料を整え、身体の修復を支えている臓器の一つが肝臓なのです。

そのため肝臓の働きが大きく低下すれば身体は栄養やエネルギーをうまく利用できなくなり、疲労からの回復や傷んだ組織の修復にも影響が出てきます。

さらに肝臓には血液中の糖の量を調整するという重要な役割があります。

食事をすると食べ物に含まれていた糖が血液中に入り血糖値が上がります。すると肝臓はすぐに使わない糖の一部を取り込み、必要になるまで蓄えておきます。

反対に空腹時などで血糖値が下がると肝臓は蓄えていた糖を血液中へ戻します。

つまり肝臓は糖が多いときには預かり、少なくなったときには送り出すことで血糖値が大きく乱れないように調整しているのです。

しかし糖を摂り過ぎる生活が続くと肝臓に運び込まれる糖の量も増えていきます。

肝臓が糖を蓄えられる量には限界があるため、使い切れずに余った糖の一部は脂肪へと作り変えられます。その脂肪が肝臓に蓄積した状態が脂肪肝です。

脂肪肝になると血糖値を下げるために働くインスリンというホルモンが効きにくくなります。すると身体は血糖値を下げるためにより多くのインスリンを必要とするようになります。

それでもこの状態が長く続けば次第に血糖値を正常な範囲に保てなくなり、糖尿病へと進みやすくなります。

一方、高血糖の状態が続くとさらに脂肪がつくられやすくなり、脂肪肝も悪化します。

つまり糖の摂り過ぎによって肝臓に脂肪がたまると血糖値を下げにくくなり、血糖値が高くなるとさらに肝臓に脂肪がたまりやすくなるという悪循環が始まるのです。

そして糖尿病になり、高血糖の状態が長く続くと血管が少しずつ傷つけられていきます。

これは血液中に糖が多い状態が続くことで「糖化」や「酸化ストレス」が起こり、血管の内側が傷みやすくなるためです。

そしてその中でも特に影響を受けやすいのが細い血管が集中している目や腎臓あるいは神経です。

そのため糖尿病が進行すると視力の低下や失明につながる糖尿病網膜症、腎臓の働きが低下する糖尿病性腎症、手足のしびれや感覚の低下などが起こる糖尿病性神経障害といった問題が現れます。

さらに糖尿病は細い血管だけでなく太い血管の動脈硬化も進めるため、心筋梗塞や脳梗塞の危険性も高くなります。

だからこそ肝機能や血糖値に異常が現れてから対処するのではなく、日頃から肝臓に負担をかけ過ぎない食生活を心がけることが重要になってきます。

ではなぜ肝機能の低下や糖尿病を患う人が増えているのでしょうか。

もちろん原因は一つではありませんが、近年の医学研究で問題視されているものの一つが意外にも野菜ジュースや果物ジュースの習慣的な摂取です。

野菜や果物は基本的には身体に良いものではあると思いますが、ジュースになると話が変わってきます。

というのも市販の野菜ジュースや果物ジュースの中には飲みやすくするために果汁や糖を加えたものがあり、人工甘味料を使用した飲料もあります。さらに100%果汁で砂糖が加えられていなくても果物そのものに含まれる糖がなくなるわけではありません。

そして最も大きな問題が液体になっていることです。

野菜や果物をそのまま食べる場合は食物繊維と一緒に摂るうえ、噛みながら時間をかけて食べるため糖の吸収も比較的緩やかになります。

ところがジュースになると食物繊維が少なくなり、噛むこともなく短時間で飲めてしまいます。そのため多くの糖が一気に体内へ入り血糖値を急激に上昇させやすくしてしまいます。

そして一度に大量の糖が入ってくればその処理を担う肝臓にも大きな負担がかかってしまいますし、さらには使い切れなかった糖は脂肪へと変えられ、肝臓に蓄積すれば脂肪肝にも繋がってしまいます。そのうえ万が一にもその脂肪肝が進んでしまうと今度はインスリンが効きにくくなり、血糖値も下がりにくくなるため、糖尿病へと進む悪循環が始まります。

日本糖尿病学会の診療ガイドラインでも砂糖などを加えた飲料だけでなく、果物ジュースや人工甘味料を使用した飲料についても習慣的な摂取と2型糖尿病の発症リスクとの関係が示されているくらいですから、じつは野菜ジュースや果物ジュースは非常に注意を必要とするものであるということです。

健康のために「変なジュースを飲むよりは」と思って飲まれる方も少なくないと思うのですが、じっさいは他のどんなものよりも肝臓に負担をかけ、血糖値を乱す原因になるかもしれない可能性があるわけですから何とも皮肉な話です。

だからこそ健康に関する情報は「身体に良いと言われているから」というイメージで判断するのは危険で、そんなことよりもそれが実際に身体の中でどのように働き、どこに負担をかける可能性があるのかまで調べることが重要になるというわけです。

健康のために続けていることがかえって身体に負担をかけてしまうというのは情報過多のこの時代では珍しいものではなくなってきていて、今回の野菜ジュースや果物ジュースの話はまさに健康情報をイメージだけで判断することの危うさを表している最たる事例の一つだと思いますし、そうしたことへの警鐘を鳴らしたいという想いから今月はこのお話を紹介させていただきました。

何かしら参考になることが有れば幸いです。